2. 高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク(JAKEHS)鳥取研修会
会 場: 三朝(みささ)町 総合文化ホール
主 催: JAKEHS
後 援:
鳥取県、鳥取県教育委員会、(財)国際文化フォーラム
(第1回高等学校韓国語教育セミナーの議論の続き)
M(兵庫県):
ALTが行うのは「越権行為」と思われるくらい、豊富な授業内容だ。これが1年間でこなせる内容なのか。
Y(神奈川県):
生徒集団の質にもよるが、十分できると思う。
【韓国語を使った授業】
I(鹿児島県):(ネイティブが教えているにしては)授業中、日本語を使うことが多いように感じた。松本大会で婪さん(神奈川県)の授業を見て、韓国語をどんどん使う、音を重視する必要性を感じた。せっかくネイティブによる授業なので、もっと韓国語を使うべきではないか。
N(岡山県):
音が課題だ。韓国語の発音は難しい。とても高いレベルを望んでいるのではないか。妥当といえば妥当だが。韓国語をべらべらしゃべりながら授業をやりたいが、毎年挫折している。韓国で(日本語を?)教えたこともあるが、同じだった。日本語をなかなか覚えてくれない。韓国語の文法ではなく、韓国語を教えてほしいと言われたこともある。検定試験中心にすると、文法の授業で面白くない。「ハングル」能力検定試験の準会場にもなったが、とても恥ずかしい成績だった。発音を中心にするのは理想だが、基本的な単語や文法を覚えてもらうのが基本だ。
Y(神奈川県):
音、文法、会話のどれが先というのではなく、同時進行だと思う。文法指導を日本語で説明してしまうのはもったいない。例えば、「横浜カジ」というように、韓国語で確認していくことは可能だ。TTから学べることはたくさんある。
H(東京都):
山下先生の生徒に聞いたら、「なかなか日本語をしゃべってくれない。最初困ったけれど、慣れてきた」と言っていた。どうしても困った時は日本語を使うというが、どんなときか。
Y(神奈川県):
例えば、학교(学校)の導入。〜중학교(中学校)、〜중학교、〜중학교 で自然にわからせる。회사(会社)を導入するのに、사회(社会)の逆だと説明するなど。ヒントを与えながら教える。教科書は『好きやねんハングル』を使っている。
J(鳥取県):
自分も日本語を使いすぎるのは自覚している。これが私の限界かと思った。JETプログラムに応募した本音は、日本語を勉強したいことだったかもしれない。無意識の内に日本語を使ってしまう。ストーリーの順番どおりに紙芝居を作ったら、生徒はよく覚えてくれた。生徒が朝起きて学校に行くまでの動作を物語にすると覚えやすい。起きる、顔を洗う、歯を磨く、バスに乗る、電話をする、踊る、笑う、勉強する、など。絵もオリジナルを使う。
【紙芝居の作り方】
I(鹿児島県):
紙芝居の作り方は、どうやっているのか。
J(鳥取県):
面白い話を読んで教えて、内容がわかったところで紙芝居を作らせる。
T(東京都):
もとの文章を簡単にするのでなく、最初から簡単な文章を選ぶ。アレンジはしない。テープの聞き取りができなくなるからだ。
K(東京都):
わからない生徒は必ず出る。もっとグループワークをして、お互いに教えあう形にするのがいい。授業後に理解度を確認するためのチェックノートを使うのがいい。
Y(兵庫県):
(生徒が)文章をアレンジしてもいい部分を作るといい。その方が生徒は楽しい。
2-1. JAKEHSの地域ごとの動き
兵庫・神奈川・長野・愛媛(四国)・鳥取(各学校)・大阪における韓国語教育について各地域の教員が簡単に報告した。地域活動とJAKEHSとの関係、高等学校の再編が韓国語教育に及ぼす影響、JAKEHSへの参加率、地域の会員の連携、韓国との経済関係、交流事業との関連、教育委員会の支援等に言及している。ある地域の状況や新しい動きを他の地域にどう取り込むことができるか、他の外国語教育との関係をどうするか等、掘り下げた議論が求められる。
(1)
兵庫県
P(兵庫県):
兵庫県は22校で韓国語を開講している。学校数は大阪とあまり変わらない。しかし、JAKEHSに関わっているのは4名、常時関わっているのは2名しかいない。ある日突然招待状が来て、それまで個々にやっていた教員が結集させられたとも言える[1998年の第1回高等学校韓国語教師研修会]。例えば、ネットワーク組織がなくなった時に同じように活動が続けられるかどうか。
支えがなくなった時に、それぞれの地域で活動が行われるか。本当につながるためには、一度、(JAKEHSと)切れなければならないと思う。(JAKEHSの)外向けの活動が充実して来ているが、足元の(地域)活動が不十分だ。隣りの学校でどんな授業が行われているか知らない。
兵庫の課題は、韓国語ネイティブが半分以上だということ。ALTの話しにもあったが、彼らは日韓の学校(制度や)文化の違いに悩んでいる。日本に来る韓国の先生は「優等生」が多いように思う。日本の高校の韓国語受講者は「優等生」でない場合が多い。そのギャップに悩むのだ。悩んだ時、学校で相談するのは管理職のことが多い。例えば、昼食の時間、韓国では先生たちが集まって食べるが、日本では先生方が個々に隠れるようにして食べる。日本の学校の先生方は連帯感が薄いように見える。日本と韓国で、学校文化の違いがあると思う。JAKEHS(の交流会や研修会)で教えてもらった手法を活用している。模擬授業、討論会を通じて仲良くなる方法だ。
P(兵庫県):兵庫県のスピーチ大会はレベルが高くなった。私の学校も入賞できない。韓国朝鮮語は生徒の人格形成にも関わっていく部分がある。将来の課題はJAKEHSと地域ごとの活動がどうつながっていくかである。例えば、県の組織を部会にして、校長を頭においてきちんと出張費が出るような体制を考えて行きたい。
5分間で暗誦して、表情もつける。文章は日本語で書かせて、教師が韓国語に直す。2単位の履修で1年たっていない。とにかく暗記する。10月に募集要項が出て、1〜2か月で準備する。地域で韓国語を教えている先生や大学院生などが審査員になる。毎年交代する。神戸韓国総合教育院が、スピーチ大会のスポンサーになっている。
M(兵庫県):
スピーチ大会は(生徒を指導する)先生のコンクールのようなもの。時間と熱意が必要だ。県教委が関わっているので、校長も無視できない。
(2)
神奈川県
Y(神奈川県):
プリント1〜9が今までの開設校。それ以下は学校再編によって総合学科で韓国語が導入される。総合学科の50%ぐらいに韓国語が入っていく。担当者は専任教諭。教諭が朝鮮語も行なうのが特徴だ。韓国語ネイティブは4人いる。
英語教育の教授法を応用するのが話題になっている。教員の中で(韓国語教育の)裾野が広がっていることを実感する。16人の教員のうち、JAKEHS会員になっているのが10人。全国的なつながりに関心のない人も多い。一緒にやりたくない人もいる。地域独自の形を考えていくのが大事だ。神奈川県の教科研究会の部会や連絡会を作るのも一つの方法だと考えている。外国語教科の中に韓国語部会と中国語部会を作るという話もある。今まで英語オンリーだった外国語教科が変わりつつある。
P(兵庫県):
(韓国語部会を)作ってみてつぶれたら、信用に関わる問題だと思うが。
Y(神奈川県):
構成員が専任教員に限られる。非常勤講師が参加しにくいので、中国語部会はようすを見ている状況だ。
(3)
長野県
N(長野県):
国際文化フォーラム通信60号(pp. 8-9)を参照してほしい。松本研修会(2003年10月)で報告したのと同じ状況だ。2003年度で正式に開講しているのは3校、2004年4月から4校で行われるようになる。1996年、松本蟻ヶ崎高校にいた時、学校に働きかけて韓国語の授業を始めた。長野県内の教員どうしのネットワークは、ある程度できている。兵庫県と違うのは、学校も少ないし生徒数も少ないということだ。
2003年後半から、(1)同じ言語(韓国語)を学んでいる生徒どうしのネットワーク作り、(2)学校長からの出張命令を得て出張旅費を支給してもらう状況作りに取り組んでいる。韓国語の担当教員は、日本人教員と韓国語ネイティブが半々だ。
Y(兵庫県):
初めは教員どうしの懇親会でいいのではないか。
(4)
愛媛県
G(広島県):
中国四国地方の連合組織を作るという案もある。
M(愛媛県):
【四国の状況】 香川県にもあることを知った。愛媛県では、新居浜南と北条高校が韓国語を開設している。1999年以外は実施している。愛媛県では、総合学科で3名から8名で細々と続けているのが現状だ。最大4単位まで取れる。松山−ソウル便の定期航空便開設も影響しているかもしれない。今は2年生。教科書は「よくわかる韓国語」を使っている。北条総合高校では、2年生を対象に国語の先生が孤軍奮闘していたが、1年で閉講してしまった。2003年度は英語の先生と韓国語ネイティブの非常勤講師がTTで教えている。生徒数22名。2・3年生の合同科目で、2004年度は開講できない。
韓国語の授業を絶やさないようにがんばりたい。韓国との交流の実績はない。新居浜に工業高校がある。「空とぶ車椅子活動」で、生徒が中古の車椅子を修理してアジアのいろいろな国に送っている。生徒が韓国にも行って車椅子を修理した。韓国から訪問団が来て生徒に感謝する話しもあった。愛媛県で大きい話題になった。愛媛県では、以前修学旅行で韓国に行っていたが、現在は中国に目が向いている。マスコミで、松山にある朝鮮学校を取材した「ウリハッキョ」がドキュメンタリーで紹介されたことがある。愛媛新聞のHPでも紹介されている。特集「在日」。
Y(兵庫県):
それぞれの地域の紹介をしてもらったが、地域でがんばっていくことが大事だ。
(5)
鳥取県
専任教員3名が、所属する学校における韓国語教育の状況を簡単に報告した。
O(鳥取県):
倉吉総合高校。5年前から韓国語を勉強している。選択科目で2・3年生が履修している。2003年度は、2年生が3名、3年生が6名だ。韓国に関心のある生徒、他の教科が嫌な生徒など、いろいろだ。韓国語の教員になりたい生徒がいたが、(韓国語教員として仕事に就くのは)難しいという話しをした。大学に行っても続けてくれるといいと思う。
県内での横のつながりはなかったが、他県の先生方が個人的に努力している姿に感心している。2004年度は選択生徒がいるかいないか、まだ見通しが立っていない。
T(鳥取県):私立の倉吉高校で教えている。県内のネットワークにも加わっていなかった。3年前、倉吉高校に国際コースができた。韓国語は必修が3単位、選択が3単位。週6時間履修すると、上達する生徒も多い。今は必修のみで、3単位で2年間履修する。2002年度はハングルに興味のある生徒が多かった。天理大や延世大語学堂に進学した生徒もいる。今の2年生には、進路先として(韓国語専攻を)考えている生徒もいる。
自分自身、韓国に留学した経験があるので、思い出しながらやっている。韓国のカナタ韓国語学院に1週間短期留学させている。日本国内でも(短期留学を)考えたいと思う。
M(鳥取県):
呉農業高校。韓国の江原道に派遣されていた。ALT主体ではなく、(専任教員が)現場で授業計画をしっかり立てるようにしたい。TTは教員の能力の高さが要求されると思う。交流としては意義がある。ALTを活用する授業ができるかとなると、(専任教員に)力がないとできない。自分の力量の範囲内での授業がいい。日本の文化面のことを中心に紹介することに意義があると思う。
韓国語の学習は市民講座から始め、国際交流員から習った。韓国から派遣されて来る人は意識の高い人が多い。鳥取なりのTTのやりかたを開発したい。
Y(兵庫県):
足元からの関係作りが進んでいくといい。自治体との関係作りについて議論を続けたい。
(6)
大阪府
I(大阪府):
大阪府には公立・私立合せて35校ある。数校兼務で教えている先生もいるし、逆に1校で何人も教えているケースもある。日本の先生には、総合学習で年間8時間程度の人もいる。教員の半数、学校の約6割がJAKEHSに参加している。府教委主催で独自の教材「アンニョンハセヨ」を作り、CDも作っている。CDには民族学校の生徒の歌も入っている。(2003年度に)ビデオ教材を作る予定だった。府教委の担当者が熱心にやってくれている。特にコンピュータ関係のことに熱心だ。
C(大阪府):
教材作成作業に参加している。「アンニョンハセヨ」は活用できそうだ。2003年度で、この教材作成事業が終わる。2004年度からビデオ作成に取りかかる。
F(大阪府):
韓国語の授業をしたいが、なかなかさせてもらえない[千里高校、2005年に開設の予定]。多文化理解教育の弁論大会「ワイワイトーク」というのがある。賞品もでるので、生徒を参加させてほしい。研究団体として公認されているので、やりやすい。大阪府立外国人教師協議会(府立外協)という組織力のある団体がある。関西韓国文化院がやっている行事も、メールで公立校、私立校ともに発信できる。
Y(大阪府):
学習意欲の乏しい生徒の興味をいかにして持続させるかが大事だ。いろいろ工夫してやってきた。学力が低いからといって、小学生向けの教材でやると、彼らの自尊心を傷つける。今後、研修会に分科会を設け、こういう生徒に対する教授法について研究してもらいたい。
(7) 授業実践報告
P(兵庫県):
定時制高校で教えている。いかに良薬を与えても生徒は飲まない。どうやって化粧やトランプに興じる生徒をこちらに向かせていくか、日々格闘している。ベトナム籍やブラジル籍の生徒もいる。彼らは日本語もおぼつかない。
M(兵庫県):
24年間、朝鮮語を教えてきた。鄭さんの言うことはよくわかる。授業をどう成立させるかが課題だ。(70年代、高等学校における韓国語教育の)初期のころは大変だった。多文化教育を推進するためには、韓国語だけにこだわるわけにもいかない。とにかく、授業時間数が足りない。1週間に2時間や3時間では、語学教育としてはしんどい。
N(岡山県):
塾の講師が本業だ。勉強の嫌いな生徒が多い学校で、同じ悩みを抱えている。宗澤先生が休んで自分だけでやっていた時期もある。たいへんだった。今は宗澤先生が生徒をしめて雰囲気作りをしてくれている。1時間化粧をし続ける生徒もいる。どうやって生徒に話を聞かせるか研究している。韓国の子供のための韓国語教材を使ったり、文化紹介でDVDを見る時間を作ったり。週2時間やるだけで話せるようになるのは不可能だ。その2時間だけで勉強する生徒たちではない。授業が終わった後も、個別授業で「冬のソナタ」の話などをして生徒に刺激を与えている。集団授業では難しいからだ。
S(駐日韓国文化院): 第1回高等学校韓国語教育セミナーに参加できたことを嬉しく思う。韓国文化院の院長も鳥取県の韓国語熱に感激していた。韓国語教育事業への支援を当分続けたい。これだけすばらしい事業なら、韓国文化院が干渉する必要はない。対馬の研修会には、自前でも参加したいと考えている。「話してみよう韓国語」の大阪大会と東京大会に参加してほしい。東西二つの大会で、合せて86組が参加する。「ビビムボックス」という、韓国文化を紹介するセットを作った。写真や食器などの実物を入れたもので、中学校にも貸し出している。3月には準備できる見通しだ。
2-2. 大阪府の教材開発:高等学校の外国語教育多様化推進事業
2-3. 対馬研修会
2004年9月の第3週か4週の週末に対馬で研修会を開催する予定。プログラム等の詳細は決まっていない。日本と韓国の大学関係者の参加も呼びかけることを検討している。
3. フィールドワーク
高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク(JAKEHS)鳥取研修会の終了後、フィールドワークとして赤碕町にある日韓友好交流公園「風の丘」ならびに資料館を見学した。鳥取県国際課長以下国際交流員も参加し、全行程にわたって鳥取県のバスを提供していただいた。